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高校eスポーツが文化をつくる 株式会社サードウェーブ 取締役副社長 榎本一郎

「全国高校eスポーツ選手権」(毎日新聞社との共催)を日本で初めて開催し、全国の高校でeスポーツ部の発足支援を行う株式会社サードウェーブ。eスポーツをブームではなく「文化」に変え、高校教育にどう浸透させていくのか。仕掛け人の榎本一郎に聞く。

スポーツ文化の中心は高校
進路選択に大きな影響

  • 日本のスポーツ文化の中心は高校にあると思います。私は高校野球を経験しましたが、中学である程度自分の力量がわかり、高校で本格的にやるか、趣味程度に続けたいかが見えてきますよね。野球をやりたいと思う子が、野球部のない高校には行きません。そして、卒業後は大学や社会人へ進んでプロを目指すかという流れになる。ですから高校の部活動は、それだけ進路選択に重要なウエイトを占め、キャリア形成のコアになる。
    高校生にeスポーツを根付かせるためには、学校での部活が必要だと思いました。しかし、それには設備が必要です。そこで、私たちは学校側の環境を整えるために、高校eスポーツ部支援プログラムを2018年から始めました。無償期間を設けてゲーミングPC「ガレリア(GALLERIA)」を貸し出し、合計138校(2020年4月末)が導入しています。
    eスポーツを選ぶ・選ばないは本人が決めればいいことですが、「選ばない」と「選べない」とでは意味が異なります。「怪我が心配で空手はダメ」と同じように、e スポーツはさせない家庭があってもいい。だけど、最初から選択肢にないのはネガティブな発想です。

eスポーツに取り組む高校生に対する期待
部活動で練習に励み出場する大会は権威あるものにしたい

  • 企業の見方は非常にポジティブです。全国高校eスポーツ選手権にスポンサードするあるメーカーさんは、 eスポーツをやる子はITに強い、PCにアレルギーがなく、語学も含めてコミュニケーション能力も高いと見ています。これから技術者を確保するうえで、非常に重要な人材。さらに自分で部を立ち上げて、仲間を集め、大会に出場した。これだけでもう優秀なリーダーシップを持つ人材ですよね。私も採りたいと思います。
    もちろん、それなりのレギュレーションも必要です。絶対に「高校生らしい」視点は守らなければなりません。全国高校eスポーツ選手権では、不適切なプレイヤーネームでの出場は認めませんでした。なぜなら、メディアに載る時は学校名も本名も出る。出場した選手たちが社会人になった時、恥ずかしい想いをさせたくないですし、称えてあげたいのは本名です。全国高校eスポーツ選手権に出たということが、その後の人生で価値あるものでなければならない。そのためには高校野球の甲子園と同じように、全国高校eスポーツ選手権を権威あるものにしたい。
    高校eスポーツは情操教育の一環になると考えます。視力低下や依存症などネガティブな部分ばかりが言われますが、eスポーツをやれば、単純に友達ができて、そこからフィールドも広がっていく。オンライン上だけの関係では、隣の生徒が同じタイトルをプレイしていることすら知らずに3年間が終わるでしょう。でも、部活となれば同じ目標に向かって協力し合わなければならない。卒業後も思い出を共有できる関係性も築かれます。
    全国高校eスポーツ選手権は、まさに自己表現の場で、自分の努力をみんなに示す場です。eスポーツを理解するのに絶好の場です。先生方にはぜひオフライン決勝会場に足を運んで頂き、好きなことに一生懸命取組み、自信と誇りに満ちた選手の顔をぜひご覧いただきたいです。